INPIT(工業所有権情報・研修館)がタイムスタンプ保管サービスを開始

2017年3月27日から独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)では、新たなサービスとして「タイムスタンプ保管サービス(無料)」の提供を開始しました。

知的財産戦略において情報の秘匿化に対する重要性が高まる中、技術情報の保有時刻の証明も不可欠となっており、この保有時刻の証明のために、近年は民間のタイムスタンプサービス等が利用されています。

タイムスタンプサービスは、電子文書の存在時刻証明と非改ざん証明を行うものであり、紙文書に比べて容易に内容や作成日時を改ざんできてしまうという電子文書の脆弱性を補うものです。

INPITでは、時刻認証業務認定事業者が発行したタイムスタンプトークンをバックアップとしてお預かりする「タイムスタンプ保管サービス」 の提供を開始いたします。         ※タイムスタンプトークン とはTSAが時刻情報を付与して発行するファイル

このサービスでは、必要なときにタイムスタンプトークンの引き出しや預入証明書の発行を受けることができます。

「タイムスタンプ保管サービス」によって、タイムスタンプトークンの紛失に対するリスクが低減されるほか、その存在時刻・非改ざん証明の信頼性を高め立証負担を軽減する効果が期待されます。

タイムスタンプの概要

タイムスタンプは、タイムスタンプに刻印されている時刻にその文書が存在し(存在証明)、 その時刻以降文書が改ざんされていないことを証明する(非改ざん証明)ものです。

タイムスタンプ利用場面

企業等の生み出した技術については、特許等への権利化や営業秘密として秘匿化するほか、他者に使わせるオープン戦略と自社で独占するクローズ戦略とを適切に組み合わせるなど、複雑かつ高度な知財戦略を策定することが事業活動において重要となっています。

特許等への権利化をする場合は、その技術を公知にすることでその出願日時を確保することができますが、営業秘密として秘匿化する場合には、自らがその存在日時を確保しておく必要があります。

例えば、A社が営業秘密として秘匿してきた技術情報について、B社が同等の技術の特許出願をした場合で、B社がA社に対して侵害訴訟など提起したときは、 A社が先使用権(特79条)の要件事実として当該特許出願に先んじて実施の事業の準備をしていた事実を立証する必要があります。

このような立証活動においては、関連する技術・営業資料を作成・保有していた時期の証明が非常に重要となります。

そのほかに、知財関連で情報の保有時点等を証明する必要がある事例として、以下のようなものが考えられます。

1.特許、意匠、商標等の侵害訴訟において、被疑侵害者が先使用権を主張する際に、発明や意匠の実施である事業又はその準備をしていたことを立証したり、商標の先使用を立証したりする場合

2.他者の特許権や意匠権の有効性を争う審判や訴訟等において、特許や意匠登録の無効理由となる技術情報等が、出願された時点において公知であった事実を立証する場合

3.商標登録の取消しの審判において、商標権者等が登録商標の使用を立証する場合

時刻認証業務認定事業者(TSA:Time-Stamping Authority) 認定を受けてタイムスタンプサービスを提供する事業者。総務省が公表した「タイムビジ ネスに係る指針~ネットワークの安心な利用と電子データの安全な長期保存のために~」 を踏まえて、一般社団法人日本データ通信協会が定める基準を満たした技術・システム・ 運用体制によって、業務が厳正に実施されていることを認定された事業者です。(認定事 業者一覧:http://www.dekyo.or.jp/tb/list/

 

出典:独立行政法人工業所有権情報・研修館「タイムスタンプ保管サービス開始のお知らせ」を元に編集